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踏切の歌
2009/09/30(Wed)
本線の駅から延びたごく短い支線・・・
町と呼ぶには少し気が引けるような、そんな場所に彼の踏切はあった。
一日に、二十八回・・・
決して多い回数ではないが、彼はその度に一生懸命声を張り上げた。
それが、十五年続いた彼の仕事であった。

たいていの人々は、彼の脇をただすり抜けていくだけであったが、
中には、じっと彼を見つめてくれるまなざしもあった。
ただ、ここ数年、桜が咲く度に、
脇をすり抜けていくだけの人も、彼を見つめてくれる人も、
少しずつその数は減ってきていた・・・。

ある春の日の夕方、一人の男の子が、彼の元を訪れた。
踏切の中に入っては、背伸びをしてレールの彼方を見やり、
彼の足元に寄ってきては、その大きな赤い両の目をじっと見つめ、
「ねえ、まだ~?」と問いかけ・・・
かれこれ小一時間が経っただろうか。
「仕事の時間だ・・・」
彼はいつものように、大きな声を張り上げた。
すると、男の子の瞳にパァーっと光が宿り、
遮断機から身を乗り出さんばかりにして、
夕日の中から現れた列車の明かりに目を細めた。
やがて目の前を通り過ぎ、オレンジの光を浴びて遠ざかる列車を、
男の子は満面の笑顔で見送った。

それからほぼ毎日、男の子は踏切にやって来た。
たいていは、列車を一本見送ると帰っていったが、
時として、それが二本、三本となることもあった。
ただ、いつもいつも変わらなかったのは、
列車を見送った男の子が、必ず満たされた表情で踏切を後にするということであった。

彼が男の子と出逢って、二度目の夏が巡ってきた。
その夏、ある日を境に、男の子は彼の元を訪れなくなった・・・。
いや、それだけではない。
もう誰ひとり、彼の踏切にやって来る者はなくなった。
列車が走らなくなったのだ。
けれど、彼は待ち続けていた。
その男の子を、ずっと・・・。

その夏の終わり、町に奇妙な噂が流れた。
・・・ほんの数秒だが、警報機が鳴るときがある・・・列車も通らないのに・・・。

それから十年が過ぎ去ろうとしていたが、その噂が消える様子はなかった・・・。

安全対策のためのヘルメットを器用にクルクル回しながら、青年は踏切に通じる道を歩いていた。
何やらブツブツつぶやきながら・・・
 「まったく・・・本線の苦情処理だけでも手がいっぱいなのに・・・
 だからさっさと全部撤去しちまえばいいんだ。
 だいたい、なんで十年もほっといたのに、今さら調べろなんて言うんだよ。
 廃線になった踏切の警報機が鳴るだって?
 通電もしてないのに、そんなことあるはずないだろうが・・・」
コトの真偽を確かめてこい、と上司に命じられて仕方なく来たが、
やはり引き返すべきかと逡巡しながら、遠くに見え始めた踏切に目をやった。
と、青年は不思議な感覚に襲われた。
 「あ、あの踏切・・・」
そう、それは青年が子どもの頃、毎日熱心に通いつめた踏切であった。
 「そうか、あれが噂の・・・そこまでは気づかなかったな・・・
  なんせ廃線になった後、すぐに引っ越しちまったからな・・・」
転勤の多かった父の仕事の関係で、何年かおきに引っ越しを繰り返していた自分の少年期を、
青年は思い起こした。

やがてゆっくりとした足どりで歩き始めた青年は、数分後には踏切にたどり着いていた。
その中に立ち入ると、さすがにもう背伸びまではしなかったが、
あの頃毎日していたように、青年はレールの彼方を見やった。
レールを覆い隠すように伸びた雑草の背の高さが、
あの夏の日から今日まで、この場所に流れた年月の長さを物語っていた。
 「そう言えば、毎日ここに来てたんだっけな・・・列車を見るために・・・
  まったく・・・何が面白かったのか・・・
  まあ、何の偶然かわからないけど本線を経営する鉄道会社に就職したんだから、
  俺はこの踏切とも縁があるんだろうけどな・・・」
青年は、その記憶のひだを探りつつ、あの頃の自分のことを思い出そうとした。
しかし、濃いもやのようなものが頭にかかっているような感じで、
なぜここを走る列車に心惹かれたのか・・・その理由は、まったく思い出せなかった。
それどころか、町を去ってから鉄道には一切興味を示さなかった青年は、
ここを通る列車に心を惹かれていた自分と今の自分とが同じ人間だということにさえ、
どこか納得できないような気がした・・・。

踏切内から出て、その場を立ち去ろうとした青年は、
誰かに呼び止められたような気がして、ふと辺りを見渡した。
そして、自分を見下ろしているふたつの大きな目に気づいた。
それは、ところどころひび割れ汚れた赤色灯であった。
かつてはくっきりとした黄色と黒のストライプでその身をかためていたであろう警報機は、
今や全身がサビで覆われ、もともとどこが黄色でどこが黒だったのかさえ、
目を凝らさねばわからないほどになっていた。
さらには、土台のどこかが腐食してきたためか、かなり斜めに傾いていた。
そのため、青年には、その警報機が首をかしげて自分を見つめているように思えた。
 「今でも鳴る・・・これが?・・・そんな馬鹿な・・・」
軽く一瞥しただけで、警報機に背を向けて青年は歩き出した。
 「さて、これからどうするか・・・
 あの警報機が鳴っているのを実際に聞いた人か見た人を探す・・・
 いやいや・・・いるわけないよな、そんな人・・・」

 「・・・行ってしまうのか?・・・」
青年の後ろ姿を見送りながら、彼は泣いていた。
十年ぶりの再会なのに、彼にはその青年があの男の子であることがすぐわかった。
 「ずっと待ってたんだ ・・・ずっと ・・・」

あの夏の日以来、急に声が出なくなったことに戸惑いながらも、
彼は叫び続けていた・・・会いたい、会いたいと・・・。
もちろん、その叫びは、誰にも聞こえることはない・・・はずだった。
ところが、何日か叫び続けたある日、ほんの一瞬ではあるが、
・・・カンカンカン・・・
以前のような声を出すことができたのだ。
それからも、ごくたまにではあるが、声を出せる日があった。
ただ、そのためにはいつも気が遠くなるほど叫び続けなければならないのであったが、
 「声が届けば、あの子はきっと来てくれる・・・」
そう信じていたから、彼は来る日も来る日も声を限りに叫び続けた・・・。

 「あの日から、十年・・・やっと会えたんだ、なのに ・・・」
彼は、狂いそうになった。
 「また、あの子が去っていく・・・何も言わずに ! ! ・・・」
今まで感じたことのないほどの哀しみと孤独感が体の内側から湧き上がってきた。
彼は恐怖を覚え、それらを一気に吐き出すように、
どんどん小さくなっていく青年の背中めがけて、あらん限りの声を振り絞って泣き叫んだ。
 「戻ってきてくれ ! ! お願いだ ! ! ここへ、戻ってくれよ ! ! 」

・・・カンカンカン・・・
最初は、空耳だと思った。
けれど、鳴り止まない警報機の音に、青年は立ち止まりふり返った。
 「・・・まさか・・・」
今にも倒れそうな警報機の赤色灯が、ゆっくりと点滅していた・・・
青年の耳に届く音が、どんどん大きくなっていく・・・
とても通常の警報機が出す音とは思えないほどに・・・
その音の中には、何かが込められているような気がした。
 「泣いて・・・いる・・・のか・・・?」

不思議なことに、青年の目には、そこにあるはずのない様々なものが見えていた。
夕日の光を反射して輝くレール・・・
下りた遮断機・・・
近づいてくるヘッドライト・・・
通り過ぎる列車と大きくゆれるヒマワリ・・・
そして、
誇らしげに立つ警報機と、それに向かって話しかけている幼い自分・・・
警報音がひとつ鳴る度に、それらが次々と入れ替わった。
青年は、再びゆっくりと、踏切に向かって歩き出した。

警報機を見上げる位置まで来たとき、
赤色灯の点滅と警報音がピタリと止んだ。
青年は、もう一度、あの頃の自分のことを思い出していた。
 「ああ、そうか・・・
  俺は、列車が好きだったんじゃない・・・
  いや、正確には、列車だけが好きだったんじゃないんだ・・・
  あの時、ここにあるすべてのものが、俺は好きだったんだよな・・・
  地平線に向かって落ちていく夕日や茜色に染まった空も、
  遠くから聞こえる金属音や遮断機のモーター音も、
  頬をなでる風の感触も、草花の匂いも、
  それから・・・」
青年は、サビの浮き出た警報機にそっと触れた。
 「それから・・・お前の赤い大きな目が点滅するのも、やかましいくらいの警報音も・・・」
どこか申し訳なさそうに、けれど少し笑って呟いた。
 「全部・・・好きだったんだよな・・・」


彼は、再び仕事を始めた。
本線のほうに新しい踏切ができると聞いた青年が、
必死になって上司を説得し、彼をそこに移してくれたのだ。
青年は、年に何度か、彼の顔を見に来る。
もう、彼に話しかけてくれることはないが・・・。
それでも、きれいに塗装してもらった全身を自慢するかのようにまっすぐに立ち、
彼は今日も、喜びの声を上げている・・・




「訪問者 その13」以来、長らく物語の創作には取り組んでいませんでしたが、
ふと思い立って、このような作品を書いてみました。
最初は、ホラー的な要素をもっとふんだんに取り入れて、
エンディングも、おどろおどろしい結末に・・・と考えていたのですが、
書き進めているうちにだんだんと、
「それじゃあ、この警報機があまりにもかわいそうかな・・・」と思い、
このような終わり方と相成りました次第です。
ゆっくりと推敲してからUPしようと思ったのですが、イラストの場合と同じく、
そんなことをしてたら、ぐずぐずといつまでも先延ばしにしてしまいそうな気がしたので、
思い切って本日UPしました (^^ゞ
いろんな点で不十分なところがいっぱいなのはわかっておりますが、
そのあたりは、平にご容赦を (^_^)


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夜景・・・
2009/09/24(Thu)
僕は自分で写真を撮ることはほとんどないのですが、
見るのは大好きです。

中でも、夜景の写真にはとても心が惹かれます。

大自然の夜景でも都会のそれであっても、
そこには必ず「光」と「影」があり、
それらが周りのものとうまく調和して、
見る側に、何とも言えない心地よさと、少しの切なさを感じさせてくれる・・・
そういった夜景の写真が好きです。

というわけで、今回は夜景を描いてみましたが・・・
難しいですね・・・
いわゆる「整合性」というものをもっときちんと考えて描けるようにならないと、と思いました。

たとえば、
「AとBはこれぐらい離れているのだから、Aの大きさがこれぐらいなら、Bの大きさはそれに対して
 どれぐらいにすればいいのか」
「Cの色や明るさはこれぐらいなら、もっと遠くにあるDのそれはどれぐらいに見えるのか」
「光がこちらからこういう角度で当たっている場合、影はどちらにどのように現れるのか」
なんていうことを、しっかり考えて描かないと、
不自然に見える部分がたくさん出てくるように思います。

まあ、あまりそれにばかり神経質になりすぎると、
絵を描く楽しさというものを見失ってしまいそうな気もしますが (^^ゞ


光と影の歌・・・

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あの頃、好きだったもの・・・
2009/09/15(Tue)
はるか昔、好きだったもの・・・
幼い頃の自分をふり返ったとき、きっと誰もが、
「ああ、そういえば自分は〇〇に夢中だったなあ・・・」
と、何かに一生懸命だった自分の姿を思い浮かべることができるのではないでしょうか。

ウルトラマン、ウルトラセブン、ゴジラ、ガメラ、・・・
特撮の怪獣ものが全盛期を迎え、おそらく日本中の男の子たちが熱狂していた時代・・・
僕もまた、その例外ではありませんでした。

あの頃から早や40年過ぎましたが、いまだに「怪獣もの」は大好きだ、という男性も、
きっと沢山おられるように思います。 (^^ゞ
僕は友人のIくんと、たまにそういった話をすることがありますが、
「日本の特撮史上、『ウルトラセブン』を超える作品はいまだに出てこないし、
 きっとこれからも、そういうものは現れないだろう」
というのが、ふたりの共通した見解です。
(まあ、詳しい話は、また後日、機会があれば・・・ということで)

というわけで、「怪獣について知っていなければ、話に加わることもできない」
というような日々を過ごしてきたわけですから、
当然、「自分で怪獣を考えて描いてみよう」という方向になっていきまして・・・
いや~、描きました、描きました。
きっと、100匹ぐらいは軽く・・・。
もちろん、子どもの拙い絵だったのですが(今でも十分拙いですけど)、
本当に、「夢中」で描きました。

もしその頃、パソコンや今使っているソフトが家にあったら、もっともっとのめり込んで、
ひょっとしたらそういう方向に進んでいたかも、と思うこともあります。

その頃のことを思い出しながら、
40年ぶりに、一匹描いてみました。

「しかしなあ・・・興味のない人がこういうもの見せられても、困るやろなあ・・・」
と思いつつ、UPします。
すいません (≧▽≦)



闇より飛来するもの・・・

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山、はるか遠けれど・・・
2009/09/07(Mon)
いつもご訪問、そして心温まるお言葉、
本当にありがとうございます m(_ _)m

おかげさまで、もう8か月もこのブログを続けることができました・・・

いつか書きましたが、自分は本当に熱しやすく冷めやすい人間なので、
もっと早く投げ出してしまうことも想像していました。

それに、当初は、
「有名人でもなんでもない自分がブログなんて始めても、
 どうせ見に来てくれる人なんていないだろう・・・」
とも思っていました。

それが気がつけば、
毎日見に来てくださる方々がいて・・・
自分の知らぬ間に拍手やボタンを押してくださる方々がいて・・・
拙い絵や文章を褒めて励ましてくださる方々がいて・・・

やっぱり、思い切ってこのブログを始めてよかったなあ、と思っています。

この感謝の気持ちをどう表していいのか、よくわからないのですが、
今は少しでも長く、このブログを続けていきたいなあと思います。



山、はるか遠けれど・・・

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